多くのmtgプレイヤーにとって今最もホットな話題といえばなんだろうか。
 プロツアーアムステルダムでの日本勢の不調の原因を、当人達に聞くことで浮き彫りにしていき、様々な波紋を広げている記事、「日本勢は何故勝てなかったのか」はすごく今ホットな話題である。これをタイトルにして日記を書けば勝手にアクセス数が増える、と冗談で言われるぐらいなのだから、それだけ多くのプレイヤーの関心を集めている話題なのだろう。
 が、そのことよりも更にたくさんの人が注目しているものがある――そう、新大型エキスパンション、ミラディンの傷跡/SCARS OF MIRRODINである。新たなカードが発表されるたびに「これは強い」「これは高い」などと様々な批評が行われる。これ自体は大型であり小型であれ、必ずプレイヤー間の話題の中心となるだろう。
 しかし大型エキスパンションに限っては、ただ発売するだけではない。ローテーションによって、環境を作り上げていたブロックの一つが、スタンダードでは使用できなくなるのだ。
 そして今回、アーティファクトが大暴れすることが既に予想できるミラディンの傷跡がスタンダードに参戦するのと入れ替わる形で退場するのは、対照的な多色のブロック、アラーラ・ブロックだ。
 このアラーラ・ブロックにおいて一番印象に残っているカードは何かと言われたら、多くのプレイヤーがこう答えるはずだ――《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf(ARB)》と。
 スタンダードの様々なデッキで使われ続けるだけでなく、先にも話題に上がったエクステンデッドで行われたプロツアーアムステルダムでも使用されたこのカードに、良かれ悪かれ思い入れが強い人も多いだろう。そして辛酸を舐めさせられた多くのプレイヤーは「やっと落ちるのか」と感じるだろう。
 が、スタンダードにやってくるなり数々のデッキに引っ張りだこだった《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf(ARB)》とは対照的に、エルドラージ覚醒が発売してからやっと日の目を見た、アラーラ再誕のカードがあった。
 《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara(ARB)》である。
 《エルドラージの徴兵/Eldrazi Conscription(ROE)》という超強力オーラがエルドラージ覚醒で出現したことにより、一気に紙から神へと生まれ変わったアラーラ再誕のこのレアは、今やトップメタといっても過言ではない徴兵バントの要だ。
 《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf(ARB)》に抱く印象とは違い、使用される機会がかなり増えたとはいえ、「もう落ちてしまうのか」と言う気さえする《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara(ARB)》。国立オリンピック記念青少年総合センターで行われているLMCでも、多くのプレイヤーが、0/1に2/1に、はたまた5/5絆魂にと、エルドラージの力を備わせていた。
 決勝テーブルで苦笑しながらライブラリーをシャッフルする有田隆一も、そんなプレイヤーの一人だった。使用するデッキはもちろん徴兵バント。
「とみーさん(関東のプレイヤー、富井翼)からもらったレシピをちょっといじっただけ」
 とバントについては語る言葉は少ないが、
「あずにゃんとにゃんにゃんとかいうらしいです。これは絶対言って欲しいみたいです」
 としっかり富井の願いを叶えてあげる有田。果たして富井が本当にそう言ったのかは謎だが、それはおいておこう。
 そんな有田が苦笑する理由が、対戦相手である芹澤のデッキが、上陸ボロスだからだ。
 アラーラ・ブロックのカードがふんだんに使用されている有田のデッキとは反対に、芹澤のデッキはその名のとおり、ゼンディガーブロックの能力である上陸をテーマにしたもので、そのほとんどがゼンディガー以降のカードで構築されている。その完成系はゼンディガー発売時点で出来上がってはいたが、Magic2011からの新鋭もしっかりと組み込まれているようで、非常に楽しみである。
 相性では上陸ボロスの芹澤が有利なのは、有田の表情からだけでも汲み取れるが、そこは四度のプロツアーサンデー経験を持つ男。果たして有田は相性を乗り越えられるのか。

 GAME 1

 ダイスロールで小さい目を出した有田が先手を取るが、オープンハンドは気に入らず即座にマリガン。続いて配られた緑マナと二枚の《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara(ARB)》、《水蓮のコブラ/Lotus Cobra(ZEN)》に《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》というハンドには、しぶしぶキープをする。
 先に動いたのは後手の芹澤で、平地から《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx(ZEN)》という立ち上がり。厳しいといった表情で有田は《水蓮のコブラ/Lotus Cobra(ZEN)》でターンを返す。
 芹澤がセットした土地が《湿地の干潟/Marsh Flats(ZEN)》だったことで軽やかなステップを踏んだネコは有田に4点のダメージを刻むのだが、後続が続かない。
 《水蓮のコブラ/Lotus Cobra(ZEN)》が生き残ったことで有田のテンションはかなり上がり、「悪斬引け!」と言いながらドローすると、本当にそのドローが《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M11)》。《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs(ZEN)》をセットしつつ凶悪な天使を戦場へ送り出す。この天使はターン終了時に土地へと変わってしまうが、これにより待望の二色目である平地をサーチする。
 二枚目となる平地しかサーチできないフェッチランドを置いた芹澤は、再びネコを成長させ、レッドゾーンへ。有田のライフをちょうど半分まで削ると、《コーの空漁師/Kor Skyfisher(ZEN)》をプレイし、仕事を終えた《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx(ZEN)》を回収し、再び場に出す。
 芹澤が白単であるうちになんとか場を逆転させておきたい有田だったが土地を引けず、仕方なくフルタップで4/4の《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》を送り出す。この間に《水蓮のコブラ/Lotus Cobra(ZEN)》が二回芹澤を噛み、ライフは有田10-14芹澤に。
 ここで芹澤のトップデッキが《乾燥台地/Arid Mesa(ZEN)》。ようやくと言った様子の嘆息とともに山をサーチするも、プレイしたのは白いカード、《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant(ALA)》。またもや二回の上陸を行った《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx(ZEN)》は宙を飛び、有田のライフは1へ。
 と、一見一方的な芹澤のゲームに見えるが、実はここでのドローが、ライフを払わないでかつアンタップイン可能な土地であれば、《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara(ARB)》で勝ちなのだ。恐るべきエルドラージの力。が、《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M11)》で既に運を使ってしまったか、ドローは土地にあらず。手札と盤面を見渡して生き残りのプランを模索するも、やがてサイドボードに手をかけたのだった。

 GAME 2

 先手は有田だが先にクリーチャーを展開したのは芹澤。それも平地からの《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx(ZEN)》で、違うことといえば、有田のセットした土地が島ということだけだ。そして有田がプレイした《水蓮のコブラ/Lotus Cobra(ZEN)》が除去されず、四点のダメージを受けるというところも同じ。セットされた土地は《ぐらつく峰/Teetering Peaks(ZEN)》のため、赤マナは早くも芹澤も確保することができたのだが。
 二枚の《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor(WWK)》に《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk(ALA)》、《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M11)》という高カロリーな手札から、有田は平地をセットして青マナを出し、ジェイスを着地。そして即座にステップを踏むネコを手札に送り返す。
 このジェイスは《忘却の輪/Oblivion Ring(ALA)》でリムーブされるも、一ターンを費やしてしまった芹澤。この間に有田は二枚目のコブラを呼び出し、《陽花弁の木立ち/Sunpetal Grove(M11)》をセットして生み出した二つの青マナで、二枚目のジェイスを戦場へ。そして即座に《渦まく知識/Brainstorm(ICE)》。
 すぐに対処しなければならないプレインズウォーカーなのは芹澤も重々承知なのだが、フルタップで《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos(ALA)》をプレイし、《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx(ZEN)》と《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker(ZEN)》をサーチするのみ。その間に有田は2回目の渦巻く知識をした後、《ロウクスの戦修道士/Rhox War Monk(ALA)》と《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》を追加。
 この二体が二枚の《流刑への道/Path to Exile(CON)》で土地へと変わるも、毎ターンの渦巻く知識によって攻め手を失わない有田は、《悪斬の天使/Baneslayer Angel(M11)》を追加。これに意地の三枚目の《流刑への道/Path to Exile(CON)》を打ち込み、ようやく一息と言った様子の芹澤だったが、土地をサーチしないという有田のプレイに、眉をひそめる。それでもフルアタックを敢行し、ようやくジェイスを戦場から退けたが、有田がライブラリーに温めていたのは《エルドラージの徴兵/Eldrazi Conscription(ROE)》。滅殺によって二枚の土地と半分以上のライフを失った芹澤は、たくさん抱えた手札で場のカードを片付けた。

 GAME3

 このマッチ初の先手となった芹澤は三回目の七枚キープをするも、一ターン目にはお供はなし。一方二度目のマリガンの有田は、今度はこっちの番と言わんばかりに《貴族の教主/Noble Hierarch(CON)》を呼び出す。が、二ターン目の芹澤の《地震/Earthquake(M10)》によって、召喚酔いの解けぬまま墓地へと送られる。
 有田の初動も一ターン目こそ良かったものの、二ターン目は《セジーリのステップ/Sejiri Steppe(WWK)》をタップイン、三ターン目に芹澤が《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx(ZEN)》、《戦隊の鷹/Squadron Hawk(M11)》と展開したところに、《未達への旅/Journey to Nowhere(ZEN)》という、微妙な動き。
 一枚の鷹によって呼び出された二枚の鷹を送り出し、芹澤はターンを終了。有田は二枚目のフェッチランドを起動しつつ《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary(CON)》を呼び出すも、この4/4には飛行はついていないため、鷹の三点を喰らい―、しかもX=4の地震によって一方的に破壊されてしまう。この時点でライフは既に9。そして有田のデッキではまったく止まらない飛行が三体。
 半ば諦めかけたような表情にも見える有田は、苦笑しながら二枚目のタップイン平地である《セジーリのステップ/Sejiri Steppe(WWK)》を置いてターンを返す。そしてキッカー込みの《ゴブリンの奇襲隊/Goblin Bushwhacker(ZEN)》が追加され、鷹とともにレッドゾーンへ送り出されたところで、二枚の鷹に《流刑への道/Path to Exile(CON)》と《糾弾/Condemn(M11)》を打ち込む。残りはたったの5。
 と、ここでの有田のドローは何と《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor(WWK)》。すぐにでもプレイしたいところなのだが、実は有田、ずっと《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara(ARB)》を持っており、相手が除去も火力も持っていないことに賭け、フルタップで出そうと考えていたのだ。
 そこにやってきたジェイス。悩みに悩む有田。
 そして出した答えはフルタップでの《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara(ARB)》召喚だった。
 芹澤はゆるやかにライブラリーからカードを一枚引き、そして――動きを止めた。「《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara(ARB)》に飛行がついているか」と質問をし、ついていないという答えが返ってくると、再び黙って考え始める。この時、二枚の地震によって5点のダメージを受けていた芹澤のライフが、ちょうど今は寝ている《天界の列柱/Celestial Colonnade(WWK)》+賛美+エルドラージの徴兵の合計値と同じだったのだ。ライフは三倍近くあるが殴れない芹澤は、結局フェッチランドだけを置いてターン終了。
 有田はこのゲーム、初めての攻撃宣言を行う。この一回の戦闘でライフ14点と《戦隊の鷹/Squadron Hawk(M11)》を失った芹澤に、更に追い討ちを掛ける有田の《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor(WWK)》。芹澤のライブラリートップを見た後、笑顔で言った。
「そのままで♪」

 有田Win!
 Pokemon×Magic杯決勝
 WinterOrzVSましろ

 スイスドロー五回戦を勝ち抜き、準決勝も白星を飾り、優勝を賭けて最後の戦いに挑む二人は、優勝候補最筆頭であろうと誰もが思っていたポケモン巧者同士の対決となった。
 WinterOrzのポケモン
 ラティアス・ハッサム・サンダー・ギャラドス・ガブリアス・ソーナンス
 ましろのポケモン
 マンムー・ハピナス・スイクン・ガブリアス・ゴウカザル・ロトム(カットフォルム)

 という両陣営。筆者はWinterOrz視点で、この戦いをお届けする。

「もう何回もまっきーとはやってるから」
 そう言いながらOrzは、三匹の選出を始める。
 まずこの陣営を見て、ギャラドスの選出をすぐに決める。ちなみにOrzのギャラドスは、テンプレである「りゅうのまい、たきのぼり、じしん、ちょうはつ」とは大きく異なる、身代わり・食べ残し型である。
 通常の型と大きく異なるこのギャラドスは、ましろのポケモンたちの中の、ガブリアス以外には強いと言う。ハピナスは10万ボルトを持っている可能性はあるが――Orzは前述したとおり、何度もましろのハピナスを見てきて、ほぼ型を知っている。そしてギャラドスを、ハピナス相手に出していけると判断したのだ。
 逆にハッサムは、役に立つ相手がほとんどいないということで見切りをつけ、サンダーもでんじはを打てる相手が多くなく、こちらも活躍の機会が多くないであろうということで、Orzはまずこの二体を決勝を戦うポケモンから除外した。
 ギャラドスの次にOrzが選出を確定させたのは、ラティアスだった。
 地力の高さに加え、ましろのポケモンのほとんどに優位に立てるということで比較的すぐに決まった二匹目だったが、三匹目をガブリアスにするか、ソーナンスにするかでOrzはかなり悩む。
「相手はラティの怖さを知ってるから、ほぼ間違いなくハピナスが出てくる」
 ガブリアスはこだわりハチマキを巻いた超高火力であり、ハピナスに対して出すには悪くないようには思える。そしてソーナンスもハピナス相手に出してしまえばほぼ勝ちが確定するだろうし、筆者としては厳しそうには思えなかった。
 が、Orzは敵のハピナスの技にどくどくがあることを口にした。
「前にどくどくを見たからおそらく入ってるだろう。そうなるとソーナンスは少し厳しい…本当はソーナンスにしたいけど」
 ガブリアスはあまり選びたくないという。その理由を聞くと、やはり今までのましろとの対戦で得た経験だった。
「これとまったく同じガブリアスでロトムと打ち合ったんだけど、鬼火→いたみわけで突破されたんだよね」
 つまりソーナンスはロトムに対してもハピナスに対しても活躍が見込めるが、ガブリアスはハピナスには勝てるがロトムには厳しい。だから選ぶならばソーナンスがいいとOrzは最初は考えたようだ。が、ハピナスにはどくどくがある――可能性が強い。
 悩みに悩み、結局Orzは運命の最後の一枠を、文句なく最強のポケモンの一匹であるガブリアスに託すことに。
 そしてここで重要となる先発選びにまた時間がかかる――と思いきや、Orzはあっさりとギャラドスを選択した。
 相手の先発で来る可能性のあるガブリアスにいかくを入れることができ、スイクンに対しては食べ残し身代わり型で有利、そして相手の先発がマンムーであると予想したという。
 対戦相手のメンバーについて聞いてみると、まず先ほども話題に上がったラティアス対策としてハピナスが入り、マンムーが後に続くのでは、と読みに自信がありそうな面持ちで答えが返ってきた。が、ましろの三匹目をガブリアスと言ったときはかなり迷っているようで、どこかそうであってくれと言っているように思えた。
 それでも満足のいく選出は出来たといった様子で、対戦テーブルへと腰を下ろす。そしてギャラドス、ラティアス、ガブリアスの順番の画面をタッチし―
 決勝戦は静かに、だがおびただしい熱気で幕を開けた。


 Orzの先発ギャラドスに対し、ましろはロトム。この時Orzは動揺したかもしれないが、ギャラドスが先手で築いた身代わりがロトムのおにびをかき消したことで、「よっしゃ」と一言。続いてのりゅうのまいで赤いギャラドスがより凶悪なポケモンへと成長するのだが、身代わりは六十万ボルトによって破壊される。
 さて、せっかく舞うことの出来たギャラドスだが、ロトムにはその凶悪さを見せ付けられない。一撃で目の前の電気の霊を葬らなければ、確実に六倍の十万ボルトによってギャラドスは瀕死になる。Orzは再び身代わりを使用し様子見をすることとし、ロトムの十万ボルトがまた亡骸を増やし、ギャラドスのHPがじわじわと減るだけの一ターンとなった。
 ここでOrzはギャラドスからガブリアスへと交代することを選択。ましろのロトムが再び放った十万ボルトは、ご存知のとおりガブリアスにはまったく効果がない。これで戦いはほぼ振り出しに。
 唐突に、Orzがゲーム開始前に言っていた「ガブリアスがロトムにタイマンで負けた」ということをここで筆者は思い出した。Orzも当然、それを失念しているわけがない。覚悟の上の交代なのだろう。
 ガブリアスのげきりんはロトムのヒットポイントをゲージが黄色くなるまで減らすが死亡にはいたらず、予定調和的におにびが飛んでくるが――このおにびが何と外れる。これにはギャラリーからも、ため息とも驚きとも取れる声が。
 こだわりハチマキとげきりんによってボタンを押す権利さえないOrzはその高い知性を生かす一手を打てなかったが、それでもガブリアスは、慌てて交代で登場したマンムーに、強烈な一撃をお見舞いした。そしてここでガブリアスが暴れまわった代償で混乱したことによって、Orzは考えることを許された。
 長考。何度か控えのポケモンを見据えつつ、Orzは現役東大生の頭脳をフル回転させていく。そして選んだのは、五十パーセントに賭けたげきりんだった。
 だがげきりんは失敗し、ガブリアスは強烈な二発のツケを、自らに払うことになる。そしてまだツケは残っているとばかりに、マンムーからのがむしゃら。そして次ターンでのこおりのつぶてにより、ガブリアスは戦場から姿を消す。
 ガブリアスの仇をとるべく現れたのはギャラドス。既に死に掛けとなっているマンムーを瀕死に追い込むのは非常に簡単なことである――が、Orzはマンムーが死に際の悪あがきとしてこおりのつぶてを放ってくることを読みきり、ここで身代わりを選択する。結果、次ターンで身代わりを残した状態でこのマンムーを地震で撃破した。
 そして現れたのはロトム。先発同士の両ポケモンがここで向き合うが、状況はまったく違う。ロトムとギャラドスがお互いに傷を負っているのは共通しているが、ギャラドスにはその身を削って作り出した身代わりがある。
 この身代わりを生かし、まずギャラドスが舞う。すかさず身代わりを十万ボルトが破壊し――Orzは、ここで止まった。
 ここでのOrzの長考に驚いたのは対戦していたましろだった。そして紙になにやら計算式を書き込んでいるところを見て、ましろは思いついたように言った。
「たきのぼりが…ない?」
 そう、Orzのギャラドスはたきのぼりのスペースの技がこおりのキバなのだ。Orzが計算していたのは、攻撃力が一段階上がったギャラドスのこおりのキバが、ロトムに反撃をさせないまま瀕死状態に追い込むことができるか、ということだった。
 結果としてOrzはギャラドスをラティアスに交代させることを選んだ。ロトムはまだ二体目であり、控えているポケモンはハピナスであると読みきっている。そのハピナスに勝つには、ギャラドスしかないとOrzは考えているのだろう。
 ラティアスはギャラドスの代わりにロトムの十万ボルトを喰らう。が、ここで両者にとって予想外の事態が起きた。この十万ボルトによってラティアスが麻痺してしまったのだ。
 次の一手はお互いに交代。Orzは相手が交代してくることを読み、ラティアスからギャラドスへ。そしてロトムはハピナスと入れ替わった。そう、Orzの予想通り。
 そしてここでギャラドスは三度目の舞いを行う――が、この瞬間にましろから「よし」と言う声が上がる。今度はましろの予想通り。そしてギャラドスが舞い終わる前に、Orzは次に起こることが何かを悟った。
 すなわち、ハピナスによる十万ボルトである。
 三度舞った青き――否、赤き竜は地に落ち、異なる赤い竜が現れる。そしてその赤い竜に発射されるれいとうビームが、Orzの勝利への道を駆ける足もろともラティアスを凍りつかせてしまったのだった。


 第一回Pokemon×Magic杯優勝は、ましろことまっきぃ!


 が、試合が終わるとすぐに反省会を始めるOrz。来週にはもう新しいポケモンシリーズが発売され、この環境は終幕を迎えるというのに、勝てる立ち回りを必死に模索する。勝者を称える声の中、はっきりと筆者にはOrzの悔しさが伝わってきた。
「こおりのキバに賭けるしかなかった…」
 とOrz。
 ロトムに対してガブリアスで交換したときのことである。勝利するには、こおりのキバでロトムを氷付けかひるみ状態にし、そのまま交代させるか撃破する、という勝ち筋の薄い方法しかなかったという。
 そして十万ボルト、冷凍ビームと放ってきたハピナスに、Orzが技構成を聞くと……
「れいとうビーム、かえんほうしゃ、10まんボルト、タマゴうみです」
「どくどくないの!?前あったよね!?」
「ああ、それ別のハピナスです」
 ましろの完勝だった。


 数ヵ月後、今度はポケットモンスターブラック・ホワイトでの対戦が行われるであろうPokemon×Magic杯。7-0という全勝優勝のましろを止めるために、ポケモンをもっと大人数で楽しむために、次は更なる大人数でこの大会が開けることを期待している――と、きっと主催のヰチなら言ってくれるであろうことを祈っている。

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