赤青ストームの《選択/Opt》
2017年11月23日 Magic: The Gathering コメント (8)【イントロダクション】
17年ぶりに印刷された青のドロースペル、《選択/Opt》。
かつては《対抗呪文/Counterspell》という最強の打ち消し呪文と共に青の全盛期を支えていたカードが、『イクサラン』で蘇った。
「スタンダードで再び《選択/Opt》が使用できる!」
昔からマジックを遊んでいたプレイヤー達は口々に喜びの声をあげた。そして同時に。
「《選択/Opt》はモダン環境を変えるのではないか」とも言われるようになった。
『青1マナのドローの危険性』
モダンでは、古くから青の1マナドロースペルは危険視されていた。
モダンには数多くの高速コンボがあり、その中には2種類のカードを集めて達成するものも少なくない。《詐欺師の総督/Deceiver Exarch》と《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》の組み合わせは最もメジャーで、他には《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》と《裂け目の突破/Through the Breach》も瞬殺コンボと言って差し支えないだろう。
《風景の変容/Scapeshift》による1枚コンボデッキ『スケープシフト』も、
それらのコンボがカードプールに存在しながら、レガシーとは違い、モダンには《意志の力/Force of Will》は存在しない。「コンボの抑止力のないレガシー」こそがモダンであると言っても良い。
だからこそ、コンボを格段に達成させやすくする《思案/Ponder》と《定業/Preordain》はモダンフォーマットの禁止カードとなっている。
そんな中、やってきた新たな——古き——1枚、《選択/Opt》が、モダンで活躍を期待されるのは、当然のことだろう。
『《血清の幻視/Serum Visions》という高き壁』
青い1マナのドロースペルで今最も使用されているのは、間違いなく《血清の幻視/Serum Visions》だ。
《血清の幻視/Serum Visions》と《選択/Opt》を比べた時、間違いなく強いのは《血清の幻視/Serum Visions》である。理由としては単純で、《血清の幻視/Serum Visions》は1ドローと占術2により、ライブラリーの上から最大3枚までのカードを見ることができる。一方、選択は占術1と1ドローで2枚にしか干渉ができない。
例えば「このターンで特定のカードを引けば勝てる」という時ならば、《選択/Opt》は《血清の幻視/Serum Visions》を上回るだろう。だがそれ以外の状況では常に《血清の幻視/Serum Visions》の方が強力だ。
『比べるべき対象は』
《血清の幻視/Serum Visions》との格付けは済んだ。となれば《選択/Opt》が狙うは二番手だ。《血清の幻視/Serum Visions》の次に使用されているのは《手練/Sleight of Hand》。
そしてこの《手練/Sleight of Hand》が入っているデッキは『赤青ストーム』『アドグレイス』といったコンボデッキだ。
今回は『赤青ストーム』の観点から、《選択/Opt》と《手練/Sleight of Hand》を比べよう。
【《選択/Opt》か、《手練/Sleight of Hand》か】
この2枚を徹底的に比べるために、3つのBattleを行うことにした。
『Battle1.掘る枚数』
まずは《血清の幻視/Serum Visions》よろしくカード性能の差を比較しよう。
《選択/Opt》は前述の通り、1枚の占術の後に1ドローで最大で2枚のカードにアクセスできる。そして《手練/Sleight of Hand》は2枚を見て、その内の1枚を手札に加える。こちらも2枚。この時点では同じだ。
掘るカードの枚数については引き分け。
結果・引き分け。
『Battle2.ドローの質』
次は、占術1の後ドローと2枚見て1枚を加える、のどちらが優秀か、という話だ。
これは間違いなく、後者である。《手練/Sleight of Hand》の方がカードとして強い。2枚の内の1枚を選択するのと、2枚目が不確定な状態で1枚目を引くか引かないか選ばなければならないのとの2択なのだから、当然だ。
例えばコンボパーツが欲しい状況でライブラリートップが土地だったならば、《手練/Sleight of Hand》と《選択/Opt》に違いはない。《手練/Sleight of Hand》ならば2枚目を選ぶし、《選択/Opt》なら下に送る。
だが、同じ状況でライブラリートップが《血清の幻視/Serum Visions》だったらどうだろうか。
《手練/Sleight of Hand》ならば、2枚目を見て選ぶことができる。ここでライブラリーの2番目が土地だったならば、トップの《血清の幻視/Serum Visions》を手札に加えるだろう。だがこれが《選択/Opt》なら?下に送るか、そのまま引くかで頭を悩ませることになる。そのまま引いたならば次のターンには無駄ドローである土地を引くことになるし、下に送れば不要な土地を引くことになる。《手練/Sleight of Hand》ならばドローすることを避けられる土地を、《選択/Opt》では引かなければならないのだ。
2枚目の情報がわからない状態で1枚目のカードを引くか引かないか選ぶというのは、《手練/Sleight of Hand》と比べた時の《選択/Opt》のこの上ないデメリットだ。上記以外にも様々な裏目が存在する。マナ加速1枚だけがほしい状況でライブラリートップに《捨て身の儀式/Desperate Ritual》があればそのまま残すだろうが、2枚目もマナ加速かもしれない。《手練/Sleight of Hand》ならば1枚を手にできていたはずなのに。
結果・《手練/Sleight of Hand》の勝利。
『Battle3.カードタイプ』
さあ、というわけで現在は《手練/Sleight of Hand》が優勢だ。
最後の比較は、この2種類のカードタイプ。すなわち《選択/Opt》がインスタントであるということが、カードテキストの弱さを補うことができるのか、だ。
コンボパーツをかき集める役割を持つ、『赤青ストーム』における1マナドロースペル。それならばインスタントかソーサリーかは重要ではなく、ドローの質こそが優先されるべき……と考えるかもしれないが、それは全く違う。
ずばり、《選択/Opt》がインスタントであるという事実は、カードテキストの弱さを打ち消すほどと言っても過言ではない。
まず、2ターン目に《差し戻し/Remand》を構えながら《選択/Opt》を唱えることができる。
これは地味で些細ではあるが、重要な点だ。そしてインスタントであることのメリットが最も直観的に伝わる事柄でもある。
手札に《手練/Sleight of Hand》と《差し戻し/Remand》がある場合、多くの場合で《差し戻し/Remand》を構えることになるだろう。だが相手も《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》を警戒して動いてこない可能性が大いにあり、《差し戻し/Remand》を打てないままターンが進むこともそれなりにある。
その時に《選択/Opt》を打てるのはインスタントであることの利点だ。
が、それは些細な利点に過ぎない。
最も重要なのが、『状況によってカードを選べる』というメリットだ。
《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》か《遵法長、バラル》が除去されるかどうか、《差し戻し/Remand》が効果的かどうか、《けちな贈り物/Gifts Ungiven》の2枚目が今必要かどうか。それは自分の都合ではなく、対戦相手の動きやデッキによって決まる。
先手1ターン目、手札に《遵法長、バラル》があり、《手練/Sleight of Hand》を打ったとしよう。ライブラリートップは《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》、2枚目は《差し戻し/Remand》だった。手札に《差し戻し/Remand》がないとして、どちらをドローするべきだろうか。
《手練/Sleight of Hand》ならば、ここで選択しなければならない。『タイタンシフト』や『ウルザトロン』との対戦ならば《差し戻し/Remand》が良いし、『バーン』や『デスシャドウ』相手ならば《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》だろう。だが判断材料はないのだ。
それが、インスタントであれば大きく変わる。相手のセットランド次第でほしいカードは絞り込める。『タイタンシフト』や『ウルザトロン』が相手ならば、干渉カードが少ないため、《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》は下に送ることになるだろう。
状況の変化に対応できるというのは、1ターン目に留まらない。
《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》が生き残ってターンが返ってきた3ターン目、《手練/Sleight of Hand》を打ったとする。ここで《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》と《差し戻し/Remand》があった場合は、どちらを取るだろうか。《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》が除去されることを考えれば前者だが、除去がない場合は無駄なドローをすることになる。
これも、《選択/Opt》ならば変わる。
相手が3ターン目に《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》に触れてくれば、《選択/Opt》でのライブラリートップの《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》はそのまま積み込んでドローするだろうし、除去せずクリーチャーを展開してきたりすれば、ボトムに送れば良い。
手札破壊を打たれた時もそうだ。
手札に《けちな贈り物/Gifts Ungiven》があり、《手練/Sleight of Hand》で見た2枚は《けちな贈り物/Gifts Ungiven》と《捨て身の儀式/Desperate Ritual》。マナ加速があれば次のターンにコンボが成立する状態のため、《捨て身の儀式/Desperate Ritual》はほしい。だが手札破壊を受けた時のことを考えると、《けちな贈り物/Gifts Ungiven》も捨てがたい。
この状況でもインスタントは活きてくる。手札破壊で《けちな贈り物/Gifts Ungiven》を抜かれたなら、《選択/Opt》で《けちな贈り物/Gifts Ungiven》をトップに残せば良いし、相手が脅威を繰り出して来たならばマナ加速を探しに、《けちな贈り物/Gifts Ungiven》をボトムに送り込むだけだ。
インスタントであることのメリットは計り知れない。
結果・《選択/Opt》の勝利。
【選択】
3つの分析の結果は1勝1敗1分に終わった。だからこそ、Magic Onlineや現実での大会で結果を残しているストームは、《選択/Opt》か《手練/Sleight of Hand》のどちらかを優先している場合もあれば、《手練/Sleight of Hand》と《選択/Opt》が同数入っているリストもあるなど、プレイヤーによって様々なのだろう。
それほど、この2つのカードの強さは拮抗しているのだ。
個人的には、ストームは《選択/Opt》と《手練/Sleight of Hand》ならば《選択/Opt》を優先して採用すべきだと考えている。
確かに《選択/Opt》と《手練/Sleight of Hand》を単純に比較した場合、性能が優秀なのは《手練/Sleight of Hand》だ。Battle.2での比較からもそれは明らかだろう。目の前に対戦相手がおらず、本当にただ性能を比べるだけならば。
だがこのゲームは対人戦であり、『赤青ストーム』は対戦相手からの妨害を大いに受けるデッキで、状況は毎ターン変化していくのだ。対戦相手、状況の変化に適応し、より良いカードを手札に入れられる可能性が高いのは《選択/Opt》なのだ。
赤青ストーム使いは、《手練/Sleight of Hand》ではなく《選択/Opt》を使うべきだ。
で、最近はGPオクラホマに行くのを決めたこともあり、赤青ストームをずっと回しているので、近い内に赤青ストームのガイドを書こうと思います。
17年ぶりに印刷された青のドロースペル、《選択/Opt》。
かつては《対抗呪文/Counterspell》という最強の打ち消し呪文と共に青の全盛期を支えていたカードが、『イクサラン』で蘇った。
「スタンダードで再び《選択/Opt》が使用できる!」
昔からマジックを遊んでいたプレイヤー達は口々に喜びの声をあげた。そして同時に。
「《選択/Opt》はモダン環境を変えるのではないか」とも言われるようになった。
『青1マナのドローの危険性』
モダンでは、古くから青の1マナドロースペルは危険視されていた。
モダンには数多くの高速コンボがあり、その中には2種類のカードを集めて達成するものも少なくない。《詐欺師の総督/Deceiver Exarch》と《鏡割りのキキジキ/Kiki-Jiki, Mirror Breaker》の組み合わせは最もメジャーで、他には《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》と《裂け目の突破/Through the Breach》も瞬殺コンボと言って差し支えないだろう。
《風景の変容/Scapeshift》による1枚コンボデッキ『スケープシフト』も、
それらのコンボがカードプールに存在しながら、レガシーとは違い、モダンには《意志の力/Force of Will》は存在しない。「コンボの抑止力のないレガシー」こそがモダンであると言っても良い。
だからこそ、コンボを格段に達成させやすくする《思案/Ponder》と《定業/Preordain》はモダンフォーマットの禁止カードとなっている。
そんな中、やってきた新たな——古き——1枚、《選択/Opt》が、モダンで活躍を期待されるのは、当然のことだろう。
『《血清の幻視/Serum Visions》という高き壁』
青い1マナのドロースペルで今最も使用されているのは、間違いなく《血清の幻視/Serum Visions》だ。
《血清の幻視/Serum Visions》と《選択/Opt》を比べた時、間違いなく強いのは《血清の幻視/Serum Visions》である。理由としては単純で、《血清の幻視/Serum Visions》は1ドローと占術2により、ライブラリーの上から最大3枚までのカードを見ることができる。一方、選択は占術1と1ドローで2枚にしか干渉ができない。
例えば「このターンで特定のカードを引けば勝てる」という時ならば、《選択/Opt》は《血清の幻視/Serum Visions》を上回るだろう。だがそれ以外の状況では常に《血清の幻視/Serum Visions》の方が強力だ。
『比べるべき対象は』
《血清の幻視/Serum Visions》との格付けは済んだ。となれば《選択/Opt》が狙うは二番手だ。《血清の幻視/Serum Visions》の次に使用されているのは《手練/Sleight of Hand》。
そしてこの《手練/Sleight of Hand》が入っているデッキは『赤青ストーム』『アドグレイス』といったコンボデッキだ。
今回は『赤青ストーム』の観点から、《選択/Opt》と《手練/Sleight of Hand》を比べよう。
【《選択/Opt》か、《手練/Sleight of Hand》か】
この2枚を徹底的に比べるために、3つのBattleを行うことにした。
『Battle1.掘る枚数』
まずは《血清の幻視/Serum Visions》よろしくカード性能の差を比較しよう。
《選択/Opt》は前述の通り、1枚の占術の後に1ドローで最大で2枚のカードにアクセスできる。そして《手練/Sleight of Hand》は2枚を見て、その内の1枚を手札に加える。こちらも2枚。この時点では同じだ。
掘るカードの枚数については引き分け。
結果・引き分け。
『Battle2.ドローの質』
次は、占術1の後ドローと2枚見て1枚を加える、のどちらが優秀か、という話だ。
これは間違いなく、後者である。《手練/Sleight of Hand》の方がカードとして強い。2枚の内の1枚を選択するのと、2枚目が不確定な状態で1枚目を引くか引かないか選ばなければならないのとの2択なのだから、当然だ。
例えばコンボパーツが欲しい状況でライブラリートップが土地だったならば、《手練/Sleight of Hand》と《選択/Opt》に違いはない。《手練/Sleight of Hand》ならば2枚目を選ぶし、《選択/Opt》なら下に送る。
だが、同じ状況でライブラリートップが《血清の幻視/Serum Visions》だったらどうだろうか。
《手練/Sleight of Hand》ならば、2枚目を見て選ぶことができる。ここでライブラリーの2番目が土地だったならば、トップの《血清の幻視/Serum Visions》を手札に加えるだろう。だがこれが《選択/Opt》なら?下に送るか、そのまま引くかで頭を悩ませることになる。そのまま引いたならば次のターンには無駄ドローである土地を引くことになるし、下に送れば不要な土地を引くことになる。《手練/Sleight of Hand》ならばドローすることを避けられる土地を、《選択/Opt》では引かなければならないのだ。
2枚目の情報がわからない状態で1枚目のカードを引くか引かないか選ぶというのは、《手練/Sleight of Hand》と比べた時の《選択/Opt》のこの上ないデメリットだ。上記以外にも様々な裏目が存在する。マナ加速1枚だけがほしい状況でライブラリートップに《捨て身の儀式/Desperate Ritual》があればそのまま残すだろうが、2枚目もマナ加速かもしれない。《手練/Sleight of Hand》ならば1枚を手にできていたはずなのに。
結果・《手練/Sleight of Hand》の勝利。
『Battle3.カードタイプ』
さあ、というわけで現在は《手練/Sleight of Hand》が優勢だ。
最後の比較は、この2種類のカードタイプ。すなわち《選択/Opt》がインスタントであるということが、カードテキストの弱さを補うことができるのか、だ。
コンボパーツをかき集める役割を持つ、『赤青ストーム』における1マナドロースペル。それならばインスタントかソーサリーかは重要ではなく、ドローの質こそが優先されるべき……と考えるかもしれないが、それは全く違う。
ずばり、《選択/Opt》がインスタントであるという事実は、カードテキストの弱さを打ち消すほどと言っても過言ではない。
まず、2ターン目に《差し戻し/Remand》を構えながら《選択/Opt》を唱えることができる。
これは地味で些細ではあるが、重要な点だ。そしてインスタントであることのメリットが最も直観的に伝わる事柄でもある。
手札に《手練/Sleight of Hand》と《差し戻し/Remand》がある場合、多くの場合で《差し戻し/Remand》を構えることになるだろう。だが相手も《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》を警戒して動いてこない可能性が大いにあり、《差し戻し/Remand》を打てないままターンが進むこともそれなりにある。
その時に《選択/Opt》を打てるのはインスタントであることの利点だ。
が、それは些細な利点に過ぎない。
最も重要なのが、『状況によってカードを選べる』というメリットだ。
《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》か《遵法長、バラル》が除去されるかどうか、《差し戻し/Remand》が効果的かどうか、《けちな贈り物/Gifts Ungiven》の2枚目が今必要かどうか。それは自分の都合ではなく、対戦相手の動きやデッキによって決まる。
先手1ターン目、手札に《遵法長、バラル》があり、《手練/Sleight of Hand》を打ったとしよう。ライブラリートップは《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》、2枚目は《差し戻し/Remand》だった。手札に《差し戻し/Remand》がないとして、どちらをドローするべきだろうか。
《手練/Sleight of Hand》ならば、ここで選択しなければならない。『タイタンシフト』や『ウルザトロン』との対戦ならば《差し戻し/Remand》が良いし、『バーン』や『デスシャドウ』相手ならば《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》だろう。だが判断材料はないのだ。
それが、インスタントであれば大きく変わる。相手のセットランド次第でほしいカードは絞り込める。『タイタンシフト』や『ウルザトロン』が相手ならば、干渉カードが少ないため、《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》は下に送ることになるだろう。
状況の変化に対応できるというのは、1ターン目に留まらない。
《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》が生き残ってターンが返ってきた3ターン目、《手練/Sleight of Hand》を打ったとする。ここで《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》と《差し戻し/Remand》があった場合は、どちらを取るだろうか。《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》が除去されることを考えれば前者だが、除去がない場合は無駄なドローをすることになる。
これも、《選択/Opt》ならば変わる。
相手が3ターン目に《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》に触れてくれば、《選択/Opt》でのライブラリートップの《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》はそのまま積み込んでドローするだろうし、除去せずクリーチャーを展開してきたりすれば、ボトムに送れば良い。
手札破壊を打たれた時もそうだ。
手札に《けちな贈り物/Gifts Ungiven》があり、《手練/Sleight of Hand》で見た2枚は《けちな贈り物/Gifts Ungiven》と《捨て身の儀式/Desperate Ritual》。マナ加速があれば次のターンにコンボが成立する状態のため、《捨て身の儀式/Desperate Ritual》はほしい。だが手札破壊を受けた時のことを考えると、《けちな贈り物/Gifts Ungiven》も捨てがたい。
この状況でもインスタントは活きてくる。手札破壊で《けちな贈り物/Gifts Ungiven》を抜かれたなら、《選択/Opt》で《けちな贈り物/Gifts Ungiven》をトップに残せば良いし、相手が脅威を繰り出して来たならばマナ加速を探しに、《けちな贈り物/Gifts Ungiven》をボトムに送り込むだけだ。
インスタントであることのメリットは計り知れない。
結果・《選択/Opt》の勝利。
【選択】
3つの分析の結果は1勝1敗1分に終わった。だからこそ、Magic Onlineや現実での大会で結果を残しているストームは、《選択/Opt》か《手練/Sleight of Hand》のどちらかを優先している場合もあれば、《手練/Sleight of Hand》と《選択/Opt》が同数入っているリストもあるなど、プレイヤーによって様々なのだろう。
それほど、この2つのカードの強さは拮抗しているのだ。
個人的には、ストームは《選択/Opt》と《手練/Sleight of Hand》ならば《選択/Opt》を優先して採用すべきだと考えている。
確かに《選択/Opt》と《手練/Sleight of Hand》を単純に比較した場合、性能が優秀なのは《手練/Sleight of Hand》だ。Battle.2での比較からもそれは明らかだろう。目の前に対戦相手がおらず、本当にただ性能を比べるだけならば。
だがこのゲームは対人戦であり、『赤青ストーム』は対戦相手からの妨害を大いに受けるデッキで、状況は毎ターン変化していくのだ。対戦相手、状況の変化に適応し、より良いカードを手札に入れられる可能性が高いのは《選択/Opt》なのだ。
赤青ストーム使いは、《手練/Sleight of Hand》ではなく《選択/Opt》を使うべきだ。
で、最近はGPオクラホマに行くのを決めたこともあり、赤青ストームをずっと回しているので、近い内に赤青ストームのガイドを書こうと思います。
コメント
オプトのメリットと手練のデメリット、非常に共感出来る内容でした。
初めてこのようなチェインコンボデッキに触ったプレイヤーとしては、URストームには主要パーツが(魔力変を除いて)8枚積んであり、とても安定したデッキだと感じています。
その中では手練の「上から2枚見る」ことの有難みは薄く、「占術1」と大差が無い。逆にインスタントとソーサリーの差が際立ちます。(勿論幻視は別です、1tの幻視は最高)
今度ストームのガイドを書かれるとのことですが、使っていて「あ、ここプレイ浅い奴にはわからんとこや」と思ったことが何点かあったので、良かったら質問させてください。
メインボードについて
・クリーチャー7枚派と8枚派
・1マナキャントリップ10枚派と11枚派
・マナベース、フェッチランド型とNOフェッチ型(占術やライフが関係?)
・冠雪の島をけちで選ぶのってどんな時?
・有毒の蘇生の有無
・ぶどう弾3積み型
・差し戻し4枚だと被ると多いから3枚?
・けちで選ぶ特殊な4枚とその時の状況
・見切り発車タイミングの見極め
サイドボードについて
・パズル4枚はけちと入れ替え? パズル4けち4入れようとするとサイドアウト枚数が凄いことになって難しく感じる
・バウンスの種類と必要枚数
・巣穴からの総出をインすべき相手(逆にインしない相手?)
など。全てとは言わずとも幾つかお答えいただければ幸いです。
質問事項は大体ガイドにすべて書こうと思っていた内容なのですが、せっかくなので一つずつお答えいたします。
・クリーチャー枚数
僕は8枚が最も良いリストだと思っています。
理由としては、このデッキは《けちな贈り物/Gifts Ungiven》とゴブリンorバラルのコンボで勝利できるデッキのため、バラル・ゴブリンの2種類がかさばって結果的に手札で腐ろうとも、《けちな贈り物/Gifts Ungiven》さえあればコンボ達成に関係ないからです。
メインボード戦では、ゴブリン・バラルがいないとほとんど勝てません。そして対戦相手のデッキにはほとんどの場合、除去が入っています。
1枚目をまず除去されるとして、2枚目、場合によっては3枚目の生物はほしい場合が多いのです。
よって、8枚が最もお気に入りです。
・キャントリップ
僕のリストは11枚です。が、これについてはキャントリップの枚数というよりかは、他のカードのスロットの兼ね合いになると思います。
10枚でも11枚でもさほど変化はないかな、と思います。
・マナベース
フェッチランドマナベースが優れています。理由は単純で、その方がライフを失いにくいからです。
常に色マナを出し続けるこのデッキでは、1ターン目に置いた《シヴの浅瀬/Shivan Reef》で平気で3点食らいますからね。
・《冠雪の島/Snow-Covered Island》
ほとんど持ってくることはないですが、フェッチマナベースの時だけ、ごくまれにサーチします。《けちな贈り物/Gifts Ungiven》が手札に2枚あり、次のターンに確実に追加の土地がほしく、かつフェッチランドを起動できないほどライフがない状態でおきます。ほとんど起きませんが、逆に《島/Island》2枚にする理由がないので、散らす人もいますね。
・《有毒の蘇生/Noxious Revival》
《けちな贈り物/Gifts Ungiven》でゴブリン・バラルにたどり着くためのカードです。ゴブリン・バラルを7にして《有毒の蘇生/Noxious Revival》を入れる人がいるのはそれが理由です。
ただ、単純に《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》を4枚にした方が良いと感じました。《けちな贈り物/Gifts Ungiven》でもってくる場面は本当に訪れません。
・《ぶどう弾/Grapeshot》3枚
多い方がビートダウンに耐性がつきます。特に《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》とかを出されるとつらいので。
ただ、個人的には2枚にして《巣穴からの総出/Empty the Warrens》を入れた方が良いと思いました。メインに《巣穴からの総出/Empty the Warrens》を入れないと5色人間の《翻弄する魔道士/Meddling Mage》の《ぶどう弾/Grapeshot》指定で負けます。で、フィニッシャー自体は3枚ぐらいにとどめておきたいので。
・《差し戻し/Remand》
打てない相手が多々いる&後手で打ちづらい、というのが理由です。
親和やバーン、デスシャドウを見据えるのであれば3枚でいいです。ただ、個人的には4枚ほしいです。トロンやスケープシフトに取りこぼしたくないですし、《ヴェールのリリアナ/Liliana of the Veil》に強いですからね。
状況によって変わりますが、一番多いのは《墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage》をおかれた状況です。
《墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage》を置かれて《ぶどう弾/Grapeshot》で勝つしかなくなった時に打った《けちな贈り物/Gifts Ungiven》では、とにかく《墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage》に触れるカードと《ぶどう弾/Grapeshot》を墓地に置いてくると思います。
《破壊放題/Shattering Spree》と《ぶどう弾/Grapeshot》を持ってくることで、相手は絶対にその2枚を落とすしかないのです。だからこそ、後の2枚を好き勝手に選択できます。
こういった場合、《差し戻し/Remand》を持ってきておくとベストです。《差し戻し/Remand》で自分の《ぶどう弾/Grapeshot》を戻して再度唱えると、ストーム7の状態でも8点10点と飛びます。(もちろん手札にぶどう弾がある場合ですが)
ストームの数を稼ぐために最後の1枚を《けちな贈り物/Gifts Ungiven》にしておくとよいとおもいます。
・見切り発車
次のターン負けるかどうかですね。それに尽きます。なのでストームの熟知というよりは、対戦相手視点で考えた方が良いです。
盤面+稲妻で死ぬなら仕掛けた方が良いでしょう。
デスシャドウの場合はフェッチ起動で《死の影/Death’s Shadow》が3つ大きくなり、かつ稲妻まで考えます。
トリコの場合は《瞬唱の魔道士/Snapcaster Mage》+《稲妻/Lightning Bolt》の5点を計算しておきましょう。
手札に勝てる算段があるから仕掛ける、というよりはどうしようもなくなったら仕掛ける・それまで待つ、ですね。
《けちな贈り物/Gifts Ungiven》と入れ替えることで墓地対策・除去(ゴブリン、バラルを除去られる)の利かないサイドボーディングにします。サイド後、相手は確実に墓地対策をたくさん積んでくるので、《けちな贈り物/Gifts Ungiven》《炎の中の過去/Past in Flames》では勝てません。そして《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》には除去が大量に降ってきます。
そのため、《パズルの欠片/Pieces of the Puzzle》と《巣穴からの総出/Empty the Warrens》をサイドインします。《巣穴からの総出/Empty the Warrens》からの勝利はさほどマナがかからない(ストーム5~6で十分脅威)ので、ゴブリン・バラルが不在でもなんとかなるのです。
サイド後に墓地対策・除去対策として抜くのは《けちな贈り物/Gifts Ungiven》4、《炎の中の過去/Past in Flames》1、《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》1です。
・バウンス
ずばり《虚空の杯/Chalice of the Void》を置かれるかどうかだと思います。僕は《破壊放題/Shattering Spree》の2枚のみです。
《墓掘りの檻/Grafdigger’s Cage》はサイド後《巣穴からの総出/Empty the Warrens》プランなのでほとんど無視しています。《虚空の杯/Chalice of the Void》もプレイされるターンが4ターン目なので、《巣穴からの総出/Empty the Warrens》を早々と引けなかった時の保険の意味で2枚だけサイドに入れています。
3枚あってそれぞれ1枚ずつにすると《けちな贈り物/Gifts Ungiven》でサーチできます。
・《巣穴からの総出/Empty the Warrens》
基本的にゲーム2ではほとんどインします。インしないのは、サイドインしたところで勝てない相手や墓地対策が入っていないと大体わかっている相手のみです。
インしても勝てないのはミラーマッチです。トークンを出した返しにやられますし。
トロンも《精霊龍、ウギン/Ugin, the Spirit Dragon》や《忘却石/Oblivion Stone》大量なので入れません。
基本的に2本目は《巣穴からの総出/Empty the Warrens》にすると裏目少ないです。絶対に相手は墓地対策と@《ゴブリンの電術師/Goblin Electromancer》でキープするでしょうから。
こんなところです!
じっくり読み込んで理解を深めたいと思います。
・マナベース
フェッチレス型はサイド後はフェッチ含めてサーチを行わないのでレオニンやエイヴンを幽霊街の併用以外は無効化できる点と占術の情報が生きるようになる点で優れいると思います。
ただ月を使えないのは大きな問題点ですしどちらがいいかは好みの範囲だと思いますが。
・《有毒の蘇生/Noxious Revival》
一番の利点はけちのルートを増やせる点だと思います。
生物がいてけち後に浮き3マナが基本ですが同条件で
浮き1マナでハンドに魔力変
浮き2マナでハンドに炎の中の過去
と確殺を狙える機会が増えるのが一番の強みだと思っています。
カードを使いまわせてストームも稼ぎやすいですがサイド後にパズルで行くときは墓地対も考えると価値が低く私の場合はけちとセットでのサイドアウト率が高いです。
身近にストームプレイヤーが少ないので今後のガイドの中でもいいので意見を聞かせてもらえると嬉しいです。長文失礼しました。
僕は血染めの月を入れていませんが、それでもフェッチマナベースを変えようとは思いません。理由は既に書いている通り、ダメージを受けすぎるからですね。
エイヴンとレオニンに相対する可能性を考えると、どちらかというとフェッチなしのメリットは占術を上手く使える、ということが一番大きいと思います。
ただ、僕はそれよりもダメージを受けすぎるのが嫌でした。
有毒の蘇生についてですが、生物が生き残った状態でターンが帰って来て儀式がなく、けちを打つ、という状況よりも、1枚挿しの有毒の蘇生を引いた時の役立たなさの方が目立ちました。そもそも初手にあったらマリガンレベルですからね。
入れていた時はゴブリン・バラルを探すために打つことがほとんどでした。
なので、僕の場合は入れていません。
そもそもけちのルートを増やすための1枚挿しをほとんど必要としないのがこのデッキの良さだと思っています。素で引いて弱いカードを入れたくないのですよね。
おっしゃる通り、特定の状況下でけちからサーチする場面があるので、入れる人が多いのも納得はできます。
有毒は素引きしてもぶどう弾の使いまわしやメダリオンの回収など最低レベルの仕事がこなせるのと上記のパターンでの有毒を含むパイルを使うことも少なくないのでメインに1枚差す分には悪くないと思いますがそこもそれぞれの好みでしょうね。
回答ありがとうございました。