絶対的な相性という表現がある。そのまま額面通りに読み取るならば、それは絶対に覆ることのない相性、つまり勝率が十割ということになる。

 そんなはずはないと考えた全ての方、それは正解だ。マジックには土地を引かなくて負けることも、土地を引きすぎて負けることもある。相対した二つのデッキに相性があり、それにより勝率は変動すれど、絶対なんていうものは存在しないのだ。

 ただ、そんな言葉を思わず使いたくなるようなほどデッキ相性が凄まじく悪い戦いは、確かに存在する。

 そう、レガシー界の古株部族であるゴブリンを操る佐藤は、これからそんな戦いをしなければならないのだ。そのことを知ってか知らずか、闘士を感じるシャッフルで、静かにコンセントレーションを高める。

 一方の川北はゆったりとシャッフルを繰り返していた。これがデッキ相性差による余裕――というわけではないだろう。川北は対戦相手のシャッフルしているデッキがゴブリンとは知らないはずだ。だがこう願っているに違いない――《実物提示教育/Show and Tell(USG)》に干渉出来ない相手であってくれ、と。

 コンボ対ビートダウンは、コンボ側の速度が速ければ早いほど、ビートダウンが不利になるマッチアップだ。ビートダウンのほとんどは除去でしか対戦相手に干渉することができないからだ。

 ゴブリンは高速ビートダウンというにはやや悠長なデッキである。一方、SnTは2ターン目に《グリセルブランド/Griselbrand(AVR)》や《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》が降臨する、超高速コンボデッキだ。普通ならば手も足も出ずに負けてしまうだろう。

 だが、佐藤のサイドボードには秘策あった。そう、それはとある天使――

GAME 1

 《魂の洞窟/Cavern of Souls(AVR)》から飛び出た《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey(USG)》に早速頭を悩ませる川北だが、できることは《沸騰する小湖/Scalding Tarn(ZEN)》を置くことだけ。川北へラッキーパンチを与えた従僕は、主である《ゴブリンの戦長/Goblin Warchief(SCG)》を戦場へと案内する。

 が、ここで早くも川北が動く。戦場を闊歩するゴブリンに、そして佐藤に向けて、死を提示したのだ。すなわち、《古えの墳墓/Ancient Tomb(TMP)》からの《実物提示教育/Show and Tell(USG)》、そして《グリセルブランド/Griselbrand(AVR)》である。このビッグアクションに対して佐藤が提示したのは《スカークの探鉱者/Skirk Prospector(ONS)》と、なんとも心もとない。

 早くも死のカウントダウンをつきつけられた形となった佐藤だが、ここでのドローはなんと《群衆の親分、クレンコ/Krenko, Mob Boss(M13)》。タップするだけですぐに4体の手下が駆けつけてくるのだが、ここは機ではないのか、動かない。

 対照的に川北は即アタック。《グリセルブランド/Griselbrand(AVR)》が七枚のドローをもたらすライフをまずは川北に与え、そして今度はそのライフを要求した。悪魔との契約に納得のいかない川北は、さらに7点のライフを支払う。だが求めるものはそこにはない。川北は苦虫を潰したような表情で3回目の契約を行い、ライフはなんと2。度重なるグリセルブランドへの貢物によって息絶え絶えだが、お目当ての物はどうやら見つかったらしい。「ようやく引いたよ」と言いながら手札を整理する。

 《裏切り者の都/City of Traitors(EXO)》から2回目の《実物提示教育/Show and Tell(USG)》を行った川北は、悪魔との契約で得た《全知/Omniscience(M13)》によって、佐藤に無数の《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》を発射した。

川北1-0佐藤

 佐藤はここで秘密兵器である《絶望の天使/Angel of Despair(GPT)》を投入。《実物提示教育/Show and Tell(USG)》によって出されたものすべてに対処出来るカードである。重いと言う理由で《ゴブリンの首謀者/Goblin Ringleader(APC)》と入れ替えに。

 GAME 2

 あっという間に後がなくなってしまった佐藤に降りかかる痛恨のダブルマリガン。だが、オープニングハンドから2つ減ってしまった佐藤の手札には、しっかりと《魂の洞窟/Cavern of Souls(AVR)》と《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey(USG)》が控えていた。

 そしてこの《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey(USG)》が連れてきた親分が《群衆の親分、クレンコ/Krenko, Mob Boss(M13)》だったことで、川北は一気に時間が縮まったことを悟った。《燃え立つ願い/Burning Wish(JUD)》をキャストし、《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》を手札に加える。

 《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey(USG)》は忠実な召使として次のターンも《モグの戦争司令官/Mogg War Marshal(TSP)》をエスコートするも、ここで予告されていた《ぶどう弾/Grapeshot(TSP)》の餌食になる。だが、《リシャーダの港/Rishadan Port(MMQ)》をこのターンに引き込んでいた佐藤は川北の島を縛っていたため、《古えの墳墓/Ancient Tomb(TMP)》からマナを出させることを強制することができ、ライフを13まで減らした。

 とは言っても13。盤面だけ見ればクロックはさほど高くない。土地もドローも《実物提示教育/Show and Tell(USG)》も川北は持っている。そう、提示するものさえ引けば、いつでも良いのだ。

 そう、たったそれだけのことだ。川北はとにかく掘る。ゴブリンに殴られ続け、土地を寝かされながらも、ひたすらに堀った。そして手に入れたのは、追加の《実物提示教育/Show and Tell(USG)》と土地だけ。

 致死量のゴブリンが襲いかかってきたのを《ヴェンディリオン三人衆/Vendilion Clique(MOR)》で止めようとした川北だったが、《宝石の手の焼却者/Gempalm Incinerator(LGN)》を佐藤が公開すると、次のドローがないことを悟ったのだった。

川北1-1佐藤

 GAME 3

 二度あることは三度ある。《魂の洞窟/Cavern of Souls(AVR)》からみたび飛び出す《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey(USG)》。これには思わず笑みのこぼれる川北だが、ただ笑っていては、あの従僕が連れてくるであろう主人にあっさりと負けてしまう。だが従僕の足を止めることはできず、川北自身も勝利へ動く行動を起こす。《燃え立つ願い/Burning Wish(JUD)》で《実物提示教育/Show and Tell(USG)》を佐藤に提示したのだ。

 《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey(USG)》によって戦場へと導かれたのは《ゴブリンの女看守/Goblin Matron(USG)》。そして看守の命令により、《棘鞭使い/Stingscourger(PLC)》がライブラリーから呼び出された。これで、《実物提示教育/Show and Tell(USG)》から出てくるものが生物であれば対処出来る。ゴブリンによる最低限の抵抗だ。

 だが、現実は非情である。川北が提示した実物は、《グリセルブランド/Griselbrand(AVR)》でも《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn(ROE)》でもなく、《全知/Omniscience(M13)》。《棘鞭使い/Stingscourger(PLC)》の棘鞭はは虚しく空を切る。
 続けて《燃え立つ願い/Burning Wish(JUD)》が川北にキャストされたことにより、佐藤は敗北したという事実を全知した。

川北2-1佐藤



 相性の悪いマッチアップであることを重々理解していた佐藤は、積極的なマリガンを続けた。その結果が《魂の洞窟/Cavern of Souls(AVR)》からの《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey(USG)》であったことは、付け加えておかなければならない。

 どれだけ厳しいマッチアップであろうと、細い勝利への道を見出し、一貫性のあるプレイをする。サイドボード後のマリガンからは佐藤の勝ちへのこだわりが強くうかがえた。

 そしてその気迫に押されることなく、三戦ともに渡る1ターン目《ゴブリンの従僕/Goblin Lackey(USG)》を追い返した川北にも賞賛を送りたい。だが川北へ言葉をかけるのはまだ早い。

 優勝まで後2つ、登るべき階段があるのだから。


川北WIN!

コメント

のぶ
2012年10月8日3:07

カバレッジうまい(=゜ω゜)ノ

ゆうやん
2012年10月8日3:45

どもども。機会があればのぶさんのもぜひ書かせてください。

のぶ
2012年10月8日3:53

あざすm(_ _)m


なんかエタフェスの記事書かれるかも今日言われましたww

ゆうやん
2012年10月8日5:38

お、いいですねー。エタフェスがんばりましょー。

さとぅ
2012年10月8日14:41

Goblinsの人です。素敵なカバレージありがとうございました!

さとぅ
2012年10月8日14:41

Goblinsの人です。素敵なカバレージありがとうございました!

ゆうやん
2012年10月8日23:42

お疲れ様でした!二本目は特に素晴らしかったです。また機会がありましたら、対戦も含めてよろしくお願いします。

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索