パワーカードがうじゃうじゃのリミテッドへようこそ!
 そんな声がMOの開始音とともに聞こえてくる。《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor(WWK)》と《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic(WWK)》が一緒にあったと思ったら隣に《ネクロポーテンス/Necropotence(ICE)》がある!
 キューブドラフトを初めてプレイした人、慣れていない人は特に、カードパワーの高さに右往左往してしまい、なかなか良いデッキが組めないはず。
 そんな人たちの指針と言わないまでも、参考メモぐらいになればなぁ…なんてぐらいの気持ちなので、気軽に読んでいってください。

▽キューブドラフトにおいて考えなければならないこと▽

 通常のドラフトでのノウハウは、キューブドラフトでは役に立つとはいえない。除去を適当にピックして後はファッティを集める、というコントロール戦略はキューブドラフトでは有効ではない。

 あなたがキューブドラフトをプレイするなら、【デッキを作る】ということを常に心がけて欲しい。あなたの目の前に座る相手は、40枚のリミテッドデッキではなく、構築デッキを携えていると考えるべきだ。
 【デッキを作る】とは簡単に言ってしまえば、【白黒ヒューマンをピックしているときに《ファルケンラスの貴族/Falkenrath Noble(ISD)》が3パック目で出たけど、《小悪魔の遊び/Devil’s Play(ISD)》が一緒にある。でも《ファルケンラスの貴族/Falkenrath Noble(ISD)》を取ろう】という意識だ。(厳密に言ってしまえば、これはデッキを作るということの上の、ひとつの要素に過ぎない。もうひとつの重要な部分については今後触れて行く)
 カードパワーの高いカードばかりで構成されているキューブドラフトでは、こういったことが頻繁に起こるし、たいていの場合、色にあったカードを選んだほうが成功する。

 そしてもう一つ。キューブドラフトは、特定のアーキタイプの決め打ちこそが最も優れた戦略である。

 
【デッキを作る】
【決め打ちをする】

 この考えに至るまでには、たくさんの時間とチケットを消費した…。


▼赤単▼

 キューブドラフトにおける赤単が強力なデッキだということは周知の事実だろう。キューブドラフトをプレイしたことのない人でも、重いスペルやたくさんの色を使うデッキを自分が構築したとして、対戦相手に《ゴブリンの先達/Goblin Guide(ZEN)》から《カルガの竜王/Kargan Dragonlord(ROE)》を続けられることがどれだけ厳しいことか、想像に容易いはずだ。

 かくいう俺も赤単の強さには懐疑的ではあった。それでも認めざるを得ないほど、赤単は圧倒的なパフォーマンスを見せつけてくれた。《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor(WWK)》を握り締めながら、俺は《ボール・ライトニング/Ball Lightning(5ED)》に殴り殺されたのだから。

 赤単の決め打ちは非常に簡単だ。赤いカードをピックすれば良い。赤いクリーチャーには、赤単の戦略上使い物にならないレベルの重いカードもあるが、クリーチャーでないスペルは一貫して速い赤単を後押しするものばかりだ。ほとんどの赤い非生物呪文は火力であり、それは手放しに喜んでいいような強さのものである。
 
 赤単の決め打ちは、その安定感にあった。赤くて軽いクリーチャーさえ取れれば、後は火力を集めるだけ。火力から集めて、後で生物をピックしてもいい。《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor(WWK)》と《ケルドの匪賊/Keldon Marauders(PLC)》とあって、誰が《ケルドの匪賊/Keldon Marauders(PLC)》を取るだろうか?そんな男はまつがんだけだった。

 そう、安定感があった。赤単戦略が広く知れ渡るまでは。

 今となっては《ケルドの匪賊/Keldon Marauders(PLC)》を《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor(WWK)》に優先する人もいるだろうし、そもそも軽い生物をカットしようという意識が生まれる。それどころか、自分も赤単を決め打ちしよう、と思うプレイヤーも多くなった。

 赤単戦略は安定感のある戦略ではなくなってしまった。依然として卓一でピックできた時の強みはあるものの、3-0出来るデッキか?と言われたら首を傾げる。それに《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor(WWK)》を流して《ケルドの匪賊/Keldon Marauders(PLC)》をピックするのは精神衛生上、あまりよろしくない。

 この《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor(WWK)》を流す、という行為を二回ほど犯した(といっていい)俺は、決め打ち戦略が一度は間違っているのでは?と自問した。ドラフトで、強力レアのために一色を空けたり、多色に受けることのできる柔軟なピックをする、というのは、いまや基本戦略だ。キューブドラフトでもそれを実践すべきなのではないか?と考えた。

▼多色コントロール▼

 除去を詰め込み、《墓所のタイタン/Grave Titan(M12)》や《プレインズウォーカー、ニコル・ボーラス/Nicol Bolas, Planeswalker(CON)》を出し、カードを引く。アドバンテージ厨歓喜の夢の戦略は…全く通用しなかった。
 最大の問題はコントロールが出来ないという点だ。除去そのものの点数を下げてしまうほど、キューブドラフトのコントロールは、コントロールしきれない。
 ラス系が4枚デッキに入っていれば別だが、通常は1枚+ピン除去となる。通常のドラフトならそれでも問題ないのだが、キューブにおいてこのピン除去というのが非常に弱い。
 なぜなら、目の前から飛び出してくるのは、是が非でも除去したいクリーチャーばかりなのだ。通常のドラフトで2/2バニラを放置してルーターを除去するのとはわけが違う。結局、相手の攻勢をさばくことに全力を注いだとしても、何か1枚が残り、それにより敗北してしまう。

 だがコントロールをピックするようになり、一つだけ大きな収穫があった。それは「カウンターが強い」という知識を得たことだ。
 たいていのビートダウンは、恐ろしいクリーチャー郡だけでなく、強烈な呪文も擁している。具体的にはプレインズウォーカーだ。プレインズウォーカーは、コントロールデッキにとってどのタイミングで出されても厳しいカードである。どんなカードでもケアできるカウンターは、キューブドラフトにおいてはかなり強力だった。

 が、コントロールデッキはプレイに値しないものだという判断は変わらなかった。そしてレアを空けて受けを広くするドラフトよりも、決め打ちこそが優れていると、このとき初めて理解した。
 
 ここまでで俺が理解していたのは2つ。

・知れ渡ったとはいえ、依然として赤単は強力なデッキである。
・コントロールデッキはプレイに値しない。
 
 これにより、【赤単に強いビートダウン】こそが強力なのではないか?と考えた。

▼白単▼
 
 白が赤に強いというのは、マジックの定説といってもいい。古くは《サルタリーの僧侶/Soltari Priest(TSB)》、少し前なら《コーの火歩き/Kor Firewalker(WWK)》、今なら《機を見た援軍/Timely Reinforcements(M12)》。キューブドラフトもその例に漏れなかった。
 序盤から質の高いクリーチャーを展開できることで、まず火力圏内にライフが届きづらい。そして一旦相手の足が止まれば、4~6マナ圏の強烈なスペルがゲームメイクをしてくれる。赤単にはまず負けなくなった。コントロール相手にも、《塵を飲み込むもの、放粉痢/Hokori, Dust Drinker(BOK)》や《ハルマゲドン/Armageddon(S00)》といった土地を縛るカードが多いことで、有利に戦える。
 除去の薄いカラーだということはほとんど気にならなかった。序盤から除去したいと思うクリーチャーがあまりいなかったからだ。それはコントロールを使っていた時とはまるで逆の印象だ。コントロールが使う除去は全ての生物に対処していかなければならないが、ビートダウンはそうではない。序盤のクリーチャーのほとんどが【攻めるカード】ばかりだからだ。白単は、攻めるクリーチャーを除去しなくても良い。
 散々辛酸を舐めさせられた赤単を蹂躙しまくっているのは気持ちよかったが、不思議と3-0できなかった。俺は何度かのキューブドラフトで白単を使っているうちに、同じデッキに負け続けていることに気づいた。そして《今田家の猟犬、勇丸/Isamaru, Hound of Konda(CHK)》→《八ツ尾半/Eight-and-a-Half-Tails(CHK)》→《栄光の頌歌/Glorious Anthem(USG)》→《梅澤の十手/Umezawa’s Jitte(BOK)》という回りで負けた時に、俺は対戦していたデッキが強いデッキだということに気がついた。

 そしてそれこそが、キューブドラフト最強のアーキタイプであり、【デッキ】だった。

→#2へ続きます。

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